梔子と金木犀

雑記。基本的に思ったことを夜中に吐き出してます。時にはただのメモ。

バベルの塔展に行った話。

この前の日曜日に久しぶりに展覧会に行った。ボイマンス美術館所蔵ブリューゲルバベルの塔」展。場所は国立国際美術館

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ピーテル・ブリューゲル一世『バベルの塔


肥後橋駅から歩いて約10分。私は方向音痴の田舎者なので高層ビルに挟まれた道を歩いていると自分がどこにいるのかわからなくなってすぐに迷ってしまうのだけれど、今回は一緒に行った友人に案内してもらったのですぐにたどり着けた。


当日券を購入してエレベーターで降りて展覧会入り口へ。見始めてすぐは宗教を題材にした絵画や彫刻ばかりだった。というのもこの展覧会の副題「16世紀ネーデルラントの至宝 – ボスを超えて」とあるように16世紀ネーデルラントの絵画、彫刻、版画を展示しておりブリューゲルの作品は展覧会の一部分(と言っても4割くらいはある)なのだった。宗教をモチーフにした芸術作品は苦手だ。見ていてなんとも言えない気持ちになるから。全然副題読んでなかったからちょっとびっくりしたぜ...。薄暗めの部屋に浮かび上がるように展示されていて、地下ということもあるのだろうか、重い、神聖な空気を感じ取れた。


ところで、世間知らずで恥ずかしいのだがネーデルラントってどこなんだ?

ネーデルラントオランダ語Nederlanden英語Netherlands)は、「低地の国々」を意味し、現在のベルギーオランダルクセンブルクの3か国(ベネルクス)にあたる低地地域(オランダ語:ラーヘ・ランデン de Lage Landen 、英語:the Low Countries)内に存在した諸邦群を表す歴史学用語。(Wikipedia抜粋)

だそうです。へぇー。

よく知らないくせに調べずに行くとこういうことになります。


この展覧会でよく出てくる名前の一つ「ボス」。私は彼の名前と作品を初めて知った。彼、ヒエロニムス・ボスは彼以降のネーデルラントの芸術家たちに絶大な影響力を与えたらしい。現存作品は世界に約25点で《放浪者》と《聖クリストフォロス》の2点は今回初来日だった。


どちらの作品もど真ん中に男がいるのだが、彼らは何者なのか、どういう状況なのか、何を思っているのか、これからどのような道を辿るのかを示すモチーフが散りばめられている。私は暗示的要素は好きなのだがそれを見つけて解釈する能力はないので解説が本当に分かりやすく有り難かった。ボスがどのような意図を持ってそれらを描いたのかは本人にしか分からないが、「後世でこのように解釈されています」というのが楽しい。

聖クリストフォロスの伝承は私は知らなかった。

f:id:insomner:20171006185932j:plain(公式ホームページより)

なぜか夏目漱石夢十夜を思い出した。夢十夜では男が背負っていた子どもは前世で男が殺した人間の生まれ変わりだったか。


ボスの油彩画の後はボスの画風を真似た版画が展示されていた。ボスの作品には不気味なような可愛らしいような姿をした“モンスター”たちが多く登場する。私はビアズリーを思い出した。彼も悪魔的なキャラクターを描いていたように思う。ボスのモンスターたちは私は気持ち悪さを感じたが、ボスを模倣した作品のモンスターたちは気持ち悪さがマイルドになって可愛いらしく見えた。宗教モチーフのものは苦手だが、童話本の挿絵にもなりえそうなこれらの版画は一日中見ていられるくらい楽しくて好きだ。特に気に入ったのはブリューゲル『大きな魚は小さな魚を食う(Big fish eats little fish)』分かりやすいし、人間に腹を割かれ口から魚を出している大きな魚が可哀想にも滑稽にも感じられる。


展覧会の最後に目当ての『バベルの塔』はあった。見るために20分ほど列に並んだ。作品は思ったより小さく(59.9×74.6)、しかしその中には世界が広がっている。私たちの後ろにも待っている人が多くいたため見れたのは僅かな時間だったが、それでも細かいところまで描かれていることがわかった。本や写真を見るだけではきっと気づかなかったことだ。バベルの塔を見ている人で双眼鏡を用いている人がいた。人が極小サイズで描かれているこの絵には向いているし、きっと楽しいと思う。


展覧会を見終わった後はバベルの塔と私が甚く気に入ったBig fish〜のポストカード、そしてモンスターたちが描かれたマグカップを買って帰路に着いた。

ブリューゲルの作品は『バベルの塔』と『ベツレヘムの嬰児虐殺』くらいしか知らなかったし、ネーデルラントの芸術なんてさらにしらなかったので良い機会になった。大阪会場は10月15日まで。私の感想では魅力が絶対伝わらないことは明らかなのでみんな実際に見に行ってくれよな!